キミが教えてくれたこと
「おはよう」
「おはよー!」
夏休みが明け、またいつもの日常へと戻る
ハルトがいたのはたった数ヶ月間だったが、それでも朝起きると誰もいないことに寂しさを感じる毎日だ
父が亡くなった時も同じだった
きっと、誰もいない毎日が続くとそれに慣れて何事もなかったかのように毎日を過ごすのだろうか…
実感がわかないままハルトとよくいた中庭に行った
いつも座って話していたベンチ
緑の木々
小さな花
何も変わらない、何も無くなってなんていない
自分が忘れなければ、きっとずっと心の中に彼は生き続ける
茉莉花は深呼吸すると中庭に小さく咲く薄紫色のシオンの花に微笑んで教室棟へ向かった
「茉莉花ちゃん!おはよう!」
「おはよう」
声をかけられ振り返ると、そこには百合と譲二がいた
『おはよう』
「「?」」
茉莉花は二人の前に立つと頭を下げた
『この間はありがとう。それまでずっと連絡出来なくてごめんなさい。私、二人にとても助けられた。ちゃんとお礼を言えてなかった、本当にありがとう』
譲二と百合は目を合わせて笑った
「はははっ!もー、茉莉花ちゃんったら本当に真面目なんだから!」
「茉莉花らしいよ。それくらい当たり前だろ?友達なんだから」
百合と譲二の言葉に安心してホッと胸を撫で下ろし、一緒に微笑んだ
「あれ?茉莉花ちゃん教室行かないの?」
教室に向かっている途中、茉莉花は用事があると行って別の方へ行こうとした
『ちょっと職員室に行って来るね』
そんな茉莉花に二人は手を振り先に教室へ向かった
『失礼します』
職員室の扉を開け、担任の元に向かう
「おー、林おはよう!どうした?何かあったか?」
担任は椅子を回転させ身体ごと茉莉花に向ける
『先生、お話ししたいことがあります。
私…』