キミが教えてくれたこと
キミが教えてくれたこと
ーー7年後
『パスター!行くよー!』
茉莉花がパスタを呼ぶと奥からあくびと伸びをしているパスタが出て来た
『おはよー、眠いよねー。今日は茜さんの所に行こうね』
パスタを抱き上げ、家の鍵を閉めて茜の店に向かう
「茉莉花ちゃん、おはよう!」
『おはようございます。よろしくお願いします』
パスタの頭を撫でていってきます、と言った
「いってらっしゃーい!茉莉花先生!」
『あ、茜さん!恥ずかしいからやめてください!』
茉莉花は顔を赤くして言うが茜はそんなこと気にせずいたずらっ子の様に笑う
あれから7年。
茉莉花はあの日、担任にこう告げた
『私、教師になりたいです。以前も父と同じ職に就きたいとなんとなく進学希望にしていましたが、父が亡くなりそれが本当に自分がなりたいものかわからなくなっていました。
だけど、ある人に出会って私を変えてくれたんです。その人の様に私も誰かを支えたい。今までその人に教えてもらったことを今度は伝える立場になりたいと思ったんです』
担任は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になり頷いてくれた
遅れを取り戻すように勉強に励み、大学へ入学。無事、教員免許を取得し父の働いていた高校へと赴任し今年から一クラスを受け持つことになった
今日は入学式。
教員として2年目。
まだたくさん大変な事や悩む事もあるが、茉莉花は生徒や自分自身の成長を毎日楽しんでいた
公園には鮮やかなピンク色の桜が咲いていた
ーーハルト、あれから7年経ったよ
ーーあなたがいなくて寂しくて、苦しかったけどなんとか笑顔で頑張ってます。
ーーあなたと過ごしたのはたった数ヶ月だったけど
ーーあなたは私にたくさんのことを教えてくれた
茉莉花は春の風を感じながら駅へと向かう
ーーあなたと出会って、絶対にありえないっていうことが起きるということ。
ーー初めて会った時のことを今でも思い出す
ーーあなたを初めて見た時、全く状況が掴めなくて、あなたにひどいことをいっぱいしたね
ーーでもあなたがいたから、モノクロの毎日が綺麗に彩られたんだよ
改札に入り、いつもの決まったホームで電車を待つ