キミが教えてくれたこと
女性にお辞儀をして茉莉花は電車を降りる
改札を出て徒歩で学校に向かう
「わー!見て見て!!」
声のする方を見ると街の大画面テレビに映っている人物を指差していた
《ジョージさん、同性愛者だとカミングアウトされたということですが…》
そこにはインタビューを受けている譲二がいた
《はい、間違いありません》
譲二は笑顔で答える
《僕はずっとその事について悩んでいました。自分自身を押し殺して自分に嘘をついて、何事もなく本当の自分をさらけだせないことを。だけど、そうすることによってだんだん自分が自分では無くなってしまっているみたいでした》
周りの人達も譲二のインタビューに足を止める
《この世界は、まだまだマイノリティへの理解が不足しています。異性と恋をし、異性と結婚し、子供を産むというのが基本とされているからです。でもそれは、僕にとっては生きにくい世の中になっていました。
僕達が知らないだけで世界にはたくさんのLGBTの方々がいます。それなのに、それを理由に小さな世界ではそのこと自体が原因でイジメに繋がっていたり、差別をされたり。どうして同じ人間なのに多様な性を認められないのか、と考えていました。
だから僕がカミングアウトすることによって、そういった方々のほんの少しでもいいから勇気や希望を持ってもらいたかったんです。》
茉莉花もずっとテレビ画面を見ていた
《昔、友達に言われたんです。逃げてもいいって、私が味方だからって。その言葉にすごく救われました。
苦しい場所に留まらなくてもいい。僕がみんなの居場所になりたいって。ただ、それだけです》
「ジョージって男の人が好きだったんだー」
その声に目をやるとテレビ画面を見ていた男女がいた
「んー。でも考えさせられたな。もっとこの人達が生きやすい世の中になればいいのに」
「だねー。広い心が大事だよー」
その言葉に少し驚いた
時代は少しずつ変わってる。人の心も。
ーーそうだよ。自分を理解してくれる場所へ逃げてもいいんだよね
ーー自分で自分を守ってあげていいんだよね
茉莉花は学校へと足を進めた