memoria/primo amore【BL】
 
「──なーおっ!」


 現れたのは、遥隆が帰って来た時に引っ越し業者と一緒にいた金髪の若い女。

 水着じゃないかと思うくらい無駄に露出度の高い服装に、遥隆は思わず彼女から目を逸らした。


「遊んでないでこっち手伝えっつーの。あと、腹減った!」


 見た目通りのぶっきら棒で自分勝手な物言いだが、七生は気にした風も無く「手伝いもメシもやるからちょっと待ってろ」と、少し面倒臭そうに返す。

 そんなやりとりを見ていると、遥隆の胸がちくりと痛んだ。

 行き場の無い淡い恋心。

 男だったなおちゃん。

 彼と親しげな女性。

 12年という歳月は、余りにも……──


「……っ、折角だけど、ごめん。課題、あるから……」

「課題?」

「明日も夏期講習があるんだ」

 それじゃあ、と、遥隆は逃げるように七生の部屋から出て行く。

 玄関脇に立つ彼女の横を擦り抜けた時、ふわりと甘い香りを感じた。

 その香りを七生が好んでいるのかと思うと、吐き気がする。

 そんな自分に気が付いて、遥隆は口元を歪めた。
 

memoria
fin


>> primo amore
 
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