memoria/primo amore【BL】
「いってきます」
父に一言声を掛けて、遥隆は夏期講習へ行くために自宅を出た。
ジリジリと照らしてくる夏の日差しを見上げて目を細める。
まだまだ暑い日が続くのか、と思うとうんざりしてくるが、夏らしい陽射しだ、と思うと少しは気分が変わってくるのだから不思議だ。
自宅の門を出て数メートル。
見慣れた風景の中に見慣れない人物を見付けて、思わず遥隆は立ち止まる。
「よぉ。どっか出掛けるのか?」
眩しい空にも負けない爽やかな笑顔の七生が、アパートの敷地から出てきた。
「夏期講習があるんだ」
昨日の遥隆の振る舞いを、七生はきっと良く思っていないだろう。
そう思うと、真っ直ぐ彼の顔を見る事が出来ない。
けれど、そんな自分に七生から話し掛けてきてくれたのだ。
そんな七生の優しさを無視することは出来ないし、昨日の決意もある。