コワレモノ―人類最後の革命―
「ちょっと、何言ってるの?」
「人間は平等だってことが分かんないの!?」
「うん。だって人間、平等じゃないでしょ?」

姫乃はまだ余裕そうだった。だが少しずつ、肩にかかっている力は弱くなっていた。

「産まれた瞬間から決まっていることだってあるでしょ? 親がどれだけお金を持っているかとか、どんな顔で産まれてきたとか。この世の中はね、そういう産まれつき上位層にいる人が、その他の下の人達に施して成り立ってるんだよ。咲羅ちゃんの言ってることなんて、要はただの理想論なの。咲羅ちゃんこそ、そういうことが分かんないの?」
「それが不平等だって言ってるの!」
「人の話聞いてた?」
「本人じゃどうにもできないことで上だ下だって、上下の格差をつけることが間違ってるの! だってそれ、個人の差じゃないから!」
「それはそうだけど、だからと言って咲羅ちゃんに何ができるの? どこかでそんな演説でもしてみる? 本でも書いてみる? …無理でしょ? もう諦めた方がいいの」
「だから…絶対に許さない!」

銃を持ちながら握った手に力を入れるのは無理があったので、私は銃を手放した。するとしばらくして、やたらと長い車が銃を粉砕する音が聞こえた。もう、そんな距離まで追いつめていた。あと一息。これで、夢壊しを終えられる。私の夢を壊した人間すべてを、この手で裁くことができる。

だが、そう簡単に達成できるわけもなかった。

「姫乃様!」

銃を轢いた車が数メートル先で止まる。ふと視線をその方へずらす。黒いリムジンが路肩に止められ、中からサングラスをかけた黒服の男が走って来た。

「あ、今瀬…」
「傘もささずに何をしておられ…」

黒服の男は私の方に顔を向けた。

「…姫乃様に危害を加えようとするなど、言語道断! 共に来ていただきます!」
「ちょっ、ちょっと!」

黒服の男は私が姫乃を渡り廊下から連れ出した時と同じように私を捕らえ、リムジンのトランクに詰めた。
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