コワレモノ―人類最後の革命―
「はぁ、はぁ…」

走ること十分。やっと玄関にたどり着いた。後ろを振り返る。今瀬の姿はもうなかった。

「…よし」

ドア、というより門を開ける。とても大きく、やたらと重たい。恐らく、普段は自動なのだろう。しかし動かないということは…私の侵入を阻害しようとする人が中にもいるということだ。

「うっ…」

全力ダッシュの後の重量挙げは、四肢を持たない私にも相当応える。それでも、私は姫乃に会わなければいけない。その強い思いが、いわゆる火事場の馬鹿力を生んだのだろう。どうにか、人が一人入れるほどの隙間を作り出すことができた。

私は体を横にし、ついに中へと入った。しかしそこには…。

「逃げられると思いましたか?」

今瀬がいた。

「邪魔をしないで…!」
「させていただきますよ。これが仕事ですから」

今瀬の右手にはロープが束ねられていた。執事というものは、こんなことまでするのか。

「さあ、姫乃様に盾突いたことを後悔しなさい!」

今瀬がロープを投げる。それは見事に私の胴に腕ごと巻きつき、そして脚も縛っていた。

「くっ…!」

どれだけもがいても、外れなかった。

「謝罪の言葉があるまで、ここに放置しておきます。三十分ごとに来ますので、その時に姫乃様への謝罪の言葉をどうぞ」

今瀬は残りのロープを束ねたまま床に置くと、向こうの方の部屋へと入って行った。
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