コワレモノ―人類最後の革命―
腐っている。そう思った。心からそう思った。

不平等を正義とし、平等を悪とする。自分ではどうにもならないことで人を評価する。車の中で「人の形をした野生動物」という言い方をしていたが、真の野生動物はどっちだ、と言いたくなった。

だが、少なくともあと三十分しないとこの状況は変えようがない。しかも、謝罪をしなければならない。

廊下を歩いてきた姫乃も、私のことが見えていないかのようなそぶりだった。さっき今瀬が入った部屋と同じ部屋に入り、ドアを閉める。私は一人、その場に縛られてただ立っていた。

だが、時間が経つのは意外にも早いものだ。

「では、失礼いたします」

今瀬が部屋から出て、一礼した。そして私の方へと歩いてきた。

「どうですか? 謝罪の言葉を言う気になりましたか?」
「…」
「やはり、まだ言う気にはなりませんか。ではまた、三十分後」

こうやって、ずっとここで縛られたままなのか…。あまりの悔しさに、もはや涙すら出なかった。

姫乃に会えれば、ひとまずはそれでいい。なのに、こんなことになるなんて…。

…そうか。姫乃は今あそこにいるから、縄がほどかれた時に抜け出せば…。

「待って!」

私が呼び止めると、今瀬が歩くのをやめた。

「何ですか?」
「…」

屈辱的だが、これも夢壊しのため。言おう。

「…申し訳ありませんでした!」
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