コワレモノ―人類最後の革命―
「…意外と早かったですね、折れるのが」

今瀬は私の方へ戻ってくると、ロープをほどいた。感覚なんて消えたはずなのに、解放感がある。

「…では、もうお帰り下さい。そして今後…」

今瀬がロープを束ねている間に、私は廊下を走りだした。

「あっ! 待ちなさい!」

慌てて今瀬も走り出すが、束ね切れていないロープに足を取られてしまった。

「うあっ!」

姫乃の居場所は分かっている。さっき今瀬が出てきたあの部屋だ。そこまで距離はないし、今瀬がロープをほどいている頃にはもう用は済んでいるはずだ。

「姫乃!」

部屋に入り名前を呼ぶと、姫乃が硬直していた。

「えっ…?」
「まだ…終わってない!」

私は姫乃の手を掴み、部屋を出た。そして再び廊下を走り、丁度今ほどけた今瀬のロープを奪い取ると、車のある方へと走り出した。行きはさほど感じなかったが、帰りは雨のせいでぬかるんだ地面に足を取られそうになった。

車のドアを開け、姫乃をトランクに押し込む。そして私は運転席に乗り、挿さったままのキーを回し、エンジンをかけた。そしてアクセルを踏むと、車は走り出した。

「ちょっと…咲羅ちゃん!」
「うるさいな~、人の形をした野生動物のくせに。大人しく黙っててよ…」
「…ううっ…!」

悔しさに泣く姫乃の声を聞きながら、私はもとの交差点のところまでどうにかたどり着いた。初めての運転で少々危なっかしいところもあったが、今はそんなことを気にしている場合じゃなかった。
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