コワレモノ―人類最後の革命―
だが、そこまでは行かなければならない。私は重い体を引きずり、五キロの道を歩いた。

「ここか…」

そうしてたどり着いたのは、まさに「荒野」だった。一面何もない場所。世界は広い、と実感できる場所だった。

「じゃあ…始めるぞ」

黒田がパソコンを取り出し、ネットカフェで作成した「あるもの」を起動させる。そして充電コードを繋ぎ、同じく黒田が作成した小さな風力発電機に取り付ける。このパソコン一つの電力を賄えればいいので小型化でき、こうして持ってくることもできたのだ。

「尾所、スマホ」
「うん」

スマホをネットにつないだ状態でパソコンのすぐ傍に放置しておく。もちろん、充電コードもつないで。

「じゃあ…帰るか」
「うん。こんなに荷物持ってくる必要なかったね」
「備えあれば憂いなし、って言うだろ? この方が暴走でもして、俺達を敵としてみなしたら大変なことになる」
「『この方』なんて言い方しなくても…」
「ただの人工知能じゃないからな」

そう。私達が(ほぼ黒田が)作成したのは、人工知能。それも、世界のすべてのデータを詰め込んだものだ。

これを使って何をしようとしているのか。それは実に簡単なことだ。

人工知能に…世界を統治してもらうのだ。

今のこの世界では、人間が人間を統治し、支配し、意のままにしている。

だから格差があるのだ。実に簡単なことに、今までずっと気づかなかった。

でも、人工知能なら統治しても問題ない。作ったのが人間でも、その意思は人間ではない。自ら考える。だから、格差なんてなくなるのだ。
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