コワレモノ―人類最後の革命―

迅奈の目には、怒りしか映っていなかった。何物にも替えることができない怒りだ。

ゲームができなかったからという幼稚な理由で怒っているわけではないだろう。自分を閉じ込めた、自分から時間を少しでも奪ったという、悪に対する怒りだ。私には、そのことがはっきりと分かっていた。

「痛っ…」

体を動かそうにも、どうにも使えたものではなかった。空っぽの腕と足がもぎ取られなかったのが、奇跡と言えるほどだった。

「アンタらもね！」

倒した相手にもう用はないのだろう。迅奈は、渡辺と黒田も殴り飛ばした。

「ん？」

迅奈が私を睨みつける。

「何だ、まだ生きてたんだ。だったらさっさと謝って！」

迅奈の足が高く上げられ、そして私の背中めがけて一直線に振り下ろされる。

「あぁぁぁっ！」

迅奈の靴底から発せられた衝撃は、私を叫ばせた。もう抵抗する体力も気力も残っていなかった。このまま、迅奈の気が済むまで踏みつぶされるしかないのか…。

「何勝手に閉じ込めてくれてんのよ！　私にはやりたいことがあるの！　いっつも用事を頼んで、それで『ありがとう』って言うだけって！　そんなのおかしいっての！　ちょっとは私の気持ちにもなってよ！」

私のことを何度も何度も踏みつけながら、迅奈は怒りをぶつけた。

「…おい、桑田…」

必死の息が混ざったかすれた声で、黒田が言った。

「お前の心のよりどころ…消えたぞ…」