コワレモノ―人類最後の革命―
英知を壊す
「そこまで。解答を止め、後ろからテストを回収して下さい」

チャイムと同時に、普段は見ない顔の先生が回収の合図を出す。

今日は期末テスト。しかも二学期の、つまりもっとも出題範囲の広いテストだ。

「ねえ、どうだった~?」
「全然解けなかったよ…」
「私も。後半ほとんど空欄だったし…」
「ねえ、才夏ちゃんはどうだった?」

クラスメートの一人が、近くにいるとある女子生徒に話しかける。彼女は次の科目の教科書を出しながら答えた。

「最後から二番目の問題がちょっと難しかったけど、それ以外は普通だったよ~」
「おお…」

周囲がどよめく。

「やっぱり才夏ちゃん天才だよ~」
「そんなことないって。今回はたまたま、私の得意な所が出ただけだよ~」
「そんなこと言って、結局全部満点でぶっちぎりの一位じゃん」

数日後、テストの結果発表があった。この高校では、テストの各教科ならびに全科目の合計の順位が、上から十人分廊下に張り出されるのだ。ある程度上層ランクのクラスメートは、これを楽しみにしているらしい。

「一位誰~?」

張り紙の前の人の群れに紛れ、私も順位を見る。一位は、全教科満点の賀数才夏(カズ・サヤカ)だった。平均点が五十点以下だったテストで「最後から二番目の問題がちょっと難しい」と言った、彼女だ。

才夏は、園浦高校始まって以来の神童と噂されている。

学業では才夏の右に出る者はいない。それは、校外でも同じだ。全国模試でも、もう何回も一位を取り続けている。

そんな才夏が…夢壊しのターゲットとなった。
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