コワレモノ―人類最後の革命―
作戦を遂行する時が、やってきた。

「おはよ、咲羅」

今日も満面の笑みで私に話しかけてくる。

「あ、希実。おはよう」

一応、心なんて微塵もこもっていない挨拶だけは返しておく。もっとも、この後私は希実を崩壊させるのだから関係ないが。

昼休み。

チャイムが鳴ると同時に、男子の大半は購買部へ走り、女子の大半は机で要塞を建造する。

「咲羅」
「ん?」
「一緒にお昼食べない?」

来た。本当は屋上へ呼びだす必要があったが、希実は墓穴を掘ってくれた。

昼食を持って、屋上へと続く階段を駆け上がる。ドアを開けると、冬の冷たい風が校舎へと進軍してくる。昨日の天気予報でも寒くなると言っていたのに、わざわざ今日外で食べようとするなんて、ちょっと変だ。

「寒っ…」

本人も寒がっている。だが、このチャンスをみすみす逃すわけにはいかない。私は弁当箱を開けた。

「いただきま~す」

私達は食べ始めた。弁当は、冷めることを想定して味付けを濃くしておくものだが、今日はその対策をしていてもなお、物理的な寒さで味が薄く感じられた。

「ちょっと喉乾いてきたな…」

希実が水筒を握り、手と首を上に傾ける。今だ。私は、見られないようにケータイで電話をかけた。
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