コワレモノ―人類最後の革命―
遠雷が聞こえた。

「それだけじゃ…まだ平等じゃない…」
「へ~…。でもそれ、実現できるの?」
「実現させなきゃいけないの!」

銃口が私に向けられていることなんて、もはや忘れていた。私は、死をも恐れなくなっていた。

「他の動物には感情ってものがあるのかどうかは分からないけど、人間には感情があるでしょ? だから、人間は不平等を感じて、怒って、悲しむはず。でもその一方で、その不平等のおかげで笑ってふんぞり返ってる人もいる。そんなのおかしいでしょ!? 同じ人間っていう生物として産まれたんだよ!? しかも人間は親を選べないんだよ!? なのに産まれた瞬間から上下の差ができてるなんておかしいって!」
「…もはや笑えてくるわね。そんなの理想像よ。実現は不可能なの。よく考えてみなよ。こんなに上下の差が激しくなった社会を、咲羅が動かせる? …あ、正確に言うと三人で協力してるのよね。渡辺と黒田、だっけ? どっちにしろ、非力過ぎる。たった三人で何ができる? 三人で世界を動かせるの? そんなのできっこ…」
「できるかできないかじゃないんだって!」

雷の音がだんだんと大きくなる。そろそろ警報が出始める頃だ。早く月見を学校へ連行しないと。

「やらなくちゃいけないの! 本来はそうあるべきなの! 間違ってるのは私でも、私達でもない。私達以外の皆よ! 皆『平等にいこう』とか言っておきながら、結局不平等の上にあぐらをかいてるだけなの!」
「だから?」
「だから…私は絶対に許さない!」

一瞬だけ、隙が見えた。

月見の人差し指の力がわずかに緩むのを確認すると、すかさず私は銃を殴り、そして踏みつぶした。感覚なんてない、私の腕と脚でこそなせる技だった。

「…」
「行くよ。次は私が、月見の上でふんぞり返る番だから」
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