脳をえぐる小説集


雅彦とはじめて出会ったのは、高等学校の二年生に進級したばかりの頃だった。


新学期の朝、羅利子は教室の後のほうの席でぼんやりとしていた。新しい同級生の顔をひとりひとり眺めては、どいつもこいつも頭が悪そうなやつばかりだと思っていた。ため息をついて、鞄から本を取り出したとき、隣の席の男子生徒に声をかけられた。


「暇そうだね」


昔から男子と話すことに慣れていない羅利子は、とまどいながらも小さくうなずいた。


「おれも、暇なんだ。仲の良かったやつとは、みんな別々のクラスになってしまってね。話し相手がいないんだよ。ああ、おれは鹿村雅彦っていうんだ。よろしく」


気持ちのいいしゃべり方だった。羅利子は思わず笑顔を浮かべながら、こちらこそよろしく、とつぶやいていた。


そのあと二人で話をした。

雅彦は、とても会話が上手で、話し下手な羅利子の言葉を、じっくりと聞いてくれた。おかげで、内気な羅利子でも、気軽にしゃべることができた。


やがて親しくなり、その後も一緒によく行動するようになった。


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