脳をえぐる小説集
好きになってしまったのは、すぐだった。
雅彦を見ると、頬が熱くなってしまう。軽く手が触れただけで、胸が激しく高鳴る。異性にそんな感情を持ったのは、初めてのことだったので、どうすればいいのかわからなかった。
毎日を、悶々として過ごした。
何度も告白することを考えてみたが、自分に自信がなくて、まったく言い出せなかった。
「恋人ができたんだ」
半年後、雅彦から明るくそう告げられた瞬間、体の中がからっぽになってしまったような気がした。そうなんだ、よかったね、と言って笑う自分に腹が立った。
それ以来、雅彦と話す機会はめっきりと少なくなった。恋人に夢中になる雅彦を、ただじっと眺めることしかできなくなった。何度もあきらめようとしたが、だめだった。心の揺れを、抑えることができなかった。
やがて、心の底に押し込めたその想いは、醜悪な嫉妬へと変わっていった。