脳をえぐる小説集


ノートの帰りを待ちつづけて、二時間がたった。


その間、ゲームをして気をまぎらわせようとしたが、全然集中できなかった。


おなかがすいたので、台所へ行って、買い置きの菓子パンを食べようとしたが、緊張のせいで、口の中がかわいて、噛みつくことすらできなかった。行人は舌打ちをもらして、パンを冷蔵庫にもどした。


一階の自分の部屋にもどった。ノートは、まだもどってきていない。
「おそいな、くそ」
ため息をついて、ふと、窓を見た。


窓の外側に、何かがくっついていた。


「あ?」
行人は近づいてそれをじっと見た。


それは紙屑だった。野球ボールくらいの大きさの、くしゃくしゃに丸められた紙屑が、窓の外側にぺったりとはりついているのだ。
いつからそこにあったのか。
「何だこれ?」

行人がつぶやいたとき、その紙屑が、ひとりでに動き、ゆっくりと開いた。


それはノートだった。


しわくちゃに歪んだ黒色ノートが、窓にはりついていたのだ。


「おいおいおい」
行人はあわてて窓を開けた。


ノートはふらつきながら宙を舞い、部屋に入ると同時に、力尽きたかのように床に落ちた。
行人は、驚きながらノートを拾いあげた。
大学ノートを、まるで塵紙のように、くしゃくしゃに丸めるなんて、一体誰がやったのか?


「おい、どうしたんだよ?」
行人がたずねると、ぐしゃぐしゃになったノートの表紙に、裏に、たくさんの文字が勢いよく浮かび上がった。


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