脳をえぐる小説集
まるで蕁麻疹のように、『たすけて』という文字でノートは埋め尽くされた。
「な、何があったんだよ?」
聞いてみても、それに答える文章は何も浮かばない。
『たすけてたすけてたすけてたすけて』
という文字が、次々とあふれて、重なり、ノートが真っ黒になってゆく。
そのとき急に、ノートがびくんと震えた。
行人はノートを落としそうになり、あわてて両手で持ちなおした。
その瞬間、見下ろした床の光景に、行人は違和感を覚えた。
少し埃っぽい床に、蛍光灯の明かりに照らされて、行人の影がうつっている。
そのすぐ横に、もうひとつ、人影がうつっている。
誰かが後ろに立っている。