脳をえぐる小説集
行人はふりむいた。
すると同時に、腕がのびてきて、行人の手元から、物凄い力でノートをもぎとっていった。
目の前には、ひとりの少女が立っていた。
長髪の、十七歳くらいの少女だった。背が高い。前髪がのびていて、両目がほとんど隠れていた。髪の隙間から、わずかに見えるその瞳には、生気がなかった。
白いブラウスに、黒いスカートを身につけていた。
顔つきは整っていたが、美しいとは思えなかった。
異様だと、なぜかそう思った。
ノートは少女の手の中で、網にかかった蝉のように暴れていた。
少女は何も言わずに、そのノートを引き裂いた。