脳をえぐる小説集
「付喪狩り?」
行人はぼうぜんとつぶやいた。
「ああ、文字通り、僕たちは付喪を狩っているのさ。だから、・・・・・・あのノートを殺した。ぼくは物を愛しているんだ。本来、人々の生活を助けるはずの物達が、付喪になり、人を殺す。これはとても・・・・・・哀れだ。だから、殺すんだ。付喪になった物や道具達は、とてもかわいそうだ。だから、・・・・・・狩るんだ」
何だこいつは?と、行人はあらためて思った。
付喪を狩る?
そんないかれたことを、本気でやっているのか?
怯えながら、行人は叫んだ。
「じ、じゃあ、もういいじゃん。ノートはもうボロボロなんだから、目的は果たしたんだろ?さ、さっさと帰ってくれよ」
その少年、陸の顔に、また怒りが浮かんだ。
「あんた、ノートに対して、何も思わないのか?」
「何言ってんだよ?たかがノートだろ?」
また殴られた。
今度は、顔面を思いきりだ。
行人は、鼻をおさえてうずくまり、ぐええと泣き出した。
「・・・・・・もういい。遊美ちゃん、帰ろう」
陸は、ため息をつくと、ドアに向かって歩きだした。
遊美と呼ばれた少女は、それについていった。
行人は涙目で二人の背中をにらんだ。
その時だ。
ノブを握ろうとした陸は、急に鋭い目つきになってふりむいた。そしてとっさに壁際まで下がり、叫んだ。
「遊美ちゃん、気をつけて」
それを聞いて、遊美は無言で身構えた。
陸は、戸惑いの表情を浮かべながら、つぶやいた。
「あのノート、まだ生きてる」