脳をえぐる小説集


人形は、考えた。


どうやらこの老人は、自分に遊美という役割をあたえたがっているようだ。そういう強い期待感が、皺だらけの表情にはっきりと浮かんでいる。


人形は、うなずいた。


自分はこの老人の持ち物なのだから、持ち主の希望に従うのだ。だから、何の躊躇いもなく、無表情のまま、はっきりとうなずいてみせた。


すると、老人はその場にうずくまって泣きだした。




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