脳をえぐる小説集
遊美の人形は、それに駆け寄り、周一郎の肩を抱きあげた。
周一郎の顔が上を向いた。
死んでいた。
目から、鼻から、そして口から、だらりと絵の具を垂らして死んでいた。
付喪になった絵の具が、周一郎の体内にもぐりこんだのだ。そして肺が絵の具でいっぱいになり、周一郎は窒息して死んでしまった。
遊美の人形は、動かなかった。いや、動けなかった。
持ち主が、死んでしまった。
こういうとき、人形として、自分はどうすればいいのか、わからなかった。無言で、無表情で、腕の中の周一郎の死体を見つめ続けた。