脳をえぐる小説集
羅利子は、五時間ほどかけて、それを完成させた。
頭が痛い。大量の汗で、下着が肌にはりついている。
その場にうずくまった。こんなにも長時間、想像に集中したのは、初めてだ。
目の前の裸の雅彦は、まるで人形のように、目をつぶったまま動かなかった。
失敗してしまったのだろうか?やはりわたしの特殊な想像力でも、生きて動く幻覚などというものは、作れないのだろうか?
不安を感じて立ちあがり、雅彦の前まで歩み寄る。
彼の胸に、触れてみた。
心臓の鼓動が、手のひらに伝わってくる。
生きている。成功したんだわ。
喜びで、体が震えだした。
「雅彦」
そっと名前を呼ぶと、雅彦はまぶたを開き、死ぬ前と変わらない、太陽のような笑顔を浮かべて、明るい声をあげた。
「よう、ひさしぶり」
羅利子は、大声をあげて泣きだした。