脳をえぐる小説集
「・・・・・・え?」
陸の顔に、動揺が浮かんだ。遊美は言った。
「わたしは、持ち主である、周一郎・・・・・・父を失った。これからどうすれば、わからない。行くあてもない。このままだと、わたしはゴミになる。でも、あなたがわたしを拾ってくれるのなら、わたしはゴミにならなくてすむのだ」
ああ、そういうことか、と陸は安心した。
決して色っぽい話ではないのだ。
それはそうだ。相手は人形なのだから。
それでも、女性の形をしたものに、あなたのものにしてほしい、などと言われたら、やはりドキッとしてしまう。
遊美は続けた。
「無理にとはいわないが。できればわたしは、まだゴミにはなりたくない。差し支えなければ、わたしを拾ってもらえないだろうか?」
「拾うって・・・・・・」
いま自分は物と話しているのだと、あらためて思った。
「わたしのことを、どんなふうに使ってもらってもかまわない。わたしは人の形をしているし、動けるからな。いろいろと使い道はあると思うが」
「使う・・・・・・」
陸は、頭に浮かんだろくでもない考えをあわてて振り払った。