脳をえぐる小説集
突然の話にとまどいながら、陸はしばらく考えた。
そして、遊美の足元に転がる壊れた懐中電灯を見て、あることを思いついた。
陸は、顔をあげて、言った。
「いいよ」
「本当か?」
「うん、君は人形だから、食費とかは必要ないだろうしね。だったら、いっしょに暮らしても、大丈夫だと思うよ」
「ありがとう」
遊美は、抑揚のない声でそう言った。
「そのかわり、ぼくもお願いがあるんだ」
「何だ?」
陸は、目を細めて言った。
「君を、ぼくの武器として使わせてほしい」
「武器?」
遊美が、聞き返す。
「付喪を、狩ろうと思うんだ」
「付喪を?」
「ああ、その懐中電灯みたいに、人を襲う付喪をいっしょに探して、破壊してほしいんだ」
陸に迷いは無かった。
陸は、物を愛していた。
深く愛していた。
だから、そんな物が、人を殺すなんてことは、陸にとっては耐え難い事であった。
大好きな物に、そんなことをさせたくない。
だから、遊美というこの強い力を持つ付喪に手伝ってもらって、人を殺そうとしている物を片っ端から壊してしまおうと思った。
少し、普通ではない考え方だが、周一郎以外に人間を知らない遊美には、なんとも思わなかった。