脳をえぐる小説集
さらに月日がたった。
羅利子は、学校の中で、ますます孤立していった。
雅彦と話しているところを誰かに見られたようだった。ひとりでブツブツ何かと会話する、キモイ女という噂がたち、同級生から避けられるようになっていた。
だが、それはかえって羅利子にとって好都合であった。まわりに人が近寄らなくなれば、雅彦て話せる機会が増える。
その日も羅利子は、放課後の誰もいない教室で、雅彦と窓の外を眺めていた。
吹きこんでくる風が冷たい。校庭の木々はすっかり葉を落とし、幹と枝だけの姿になっている。
「もう、冬なんだね」
「ああ、君がおれを作ってくれてから、もう二ヶ月もたったんだな」
羅利子は、雅彦と腕を組んだ。固い筋肉の感触が、とても気持ちいい。
「まだ、帰ってなかったんだ」
突然、後ろから声をかけられた。
驚いて振り向くと、教室の入り口のあたりに、いつの間にか、沢野洋が立っていた。
「月田さんって、いつも放課後教室に残るよね」
沢野は落ち着いた笑みを浮かべながら歩みより、羅利子の前で止まった。
雅彦が、眉間にしわをよせて、なんだこいつ、とつぶやく。