脳をえぐる小説集
その日は、午後九時頃に布団に入った。しかし、膜の存在が気になって、なかなか眠れなかった。
熱帯夜だったので、布団は体温ですぐに蒸し熱くなった。その熱が、さらに睡眠をさまたげた。
しばらくして、寝転んでいる体勢に疲れてきたおれは、トイレへ行こうと思って立ち上がった。
部屋の襖を開けて、暗い廊下に出ると、両親の話し声が聞こえてきた。台所のドアの隙間から、細い一筋の光が漏れており、声はそこから聞こえた。
「あなた、どうしてあの子を蹴ったりなんかしたの?」
おふくろの、そんな言葉が耳にはいってきた。
自分について話していると気づいて、おれは足を止めた。