脳をえぐる小説集
六歳~十二歳
それからの日々は最悪だったよ。
なにしろあの膜のせいで、出会った人間全てに嫌われるようになってしまったんだからな。
誰もがおれと目をあわせただけで吐きそうな顔をする。人混みの中にいても、おれのまわりにだけ必ず空間ができる。
友達はいなくなった。
突然の孤独を前にして、おれはどうすればいいのかわからなかった。
小学生になっても、当然友達はできなかった。
え?いじめられたりはしなかったのかだって?
いや、それはなかったよ。膜のおかげで、誰も近づいてこなかったからな。
みんな、遠巻きにちらちらとおれを見るんだよ。車に轢かれた猫の死骸を見るような目つきでね。なんであんなものがここにあるんだ。誰かあれを早く片付けてくれ。そんな感じの視線が四方八方から飛んでくるんだ。
そんな小学校での六年間を過ごして、中学生になったおれは、見事に陰気で無口なクソガキと化していた。
・・・・・・ぐれたりはしなかったのかだって?
そうだな。確かにこうも嫌われ続けると、どす黒い感情がたまってくる。暴力的な衝動がこみあげてきたことは何度もあったさ。
でも、両親のことを考えると、それはできなかった。