脳をえぐる小説集
三日後の、夜のことだ。
電気をつけたまま、自分の部屋のベッドでうたた寝をしていると、突然脳天に痛みを感じて目を覚ました。
何かが頭に強く衝突したようだ。
最初は、寝相が悪くて、壁にぶつかったのだろうと考えた。しかし、そっと頭に手をあててみると、ぬるりとした感触があった。
血が出ていたんだ。
おれはおどろいて飛び起きた。すると、ベッドのそばに、人が立っていることに気がついた。
「親父?」顔をあげてつぶやいた。「何してんだ?」
それには答えずに、親父はいきなり腕をふりあげた。その手には、金鎚がにぎられていた。
ものすごく嫌な考えが頭を駆けめぐった。すぐさまその考えを否定したかったが、金鎚の先に血がついているのを見てしまって、できなかった。
おい、冗談だろ?やめてくれよ。そりゃあ、おれは嫌魔のせいで親父を苦しい目にあわせてきたさ。そのことは、本当にすまないと思っているよ。でも、だからといって、親子でそれはないだろう。
必死でそう叫ぼうとしたが、動揺が大きすぎて、声に出すことができなかった。
親父は言った。
「電気のつけっぱなしはよくない」
金鎚がふりおろされた。