脳をえぐる小説集


ガジ会の本部は、町外れの海沿いにあった。


白いコンクリートの、四角くて横長い建物だった。


まわりには、道路以外に何もない、静かな場所だった。闇の中、ゆっくりとした波の音が響いている。


建物の窓から、明かりがもれていた。深夜だというのに、中にひとがいるようだ。


おれは入口の引き戸の前に立った。ためらいをおさえながら、声をあげる。
「すいません」


・・・・・・・・・・・・。


少し待ったが、返事はなかった。


電気がついているだけで、誰もいないのかと思ったら、中の方から物音が聞こえた。


やはりひとがいる。


おれはもう一度、すいませんと声をかけた。しかし、まだ反応はない。


少しいらついたおれは、引き戸を開け、入りますよ、と言って中に足を踏み入れた。冷静でいられなかったもんでね。


玄関には、たくさんの靴がならんでいた。ガジの会のひとのものだろうか?


おれは靴を脱ぎ、廊下にあがった。


すると、奥の方から、ひとりの男があらわれた。


あの日、おれを勧誘した男。


中崎だった。



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