脳をえぐる小説集


中崎はポケットから赤い錠剤を取りだし、おれに見せた。
「これ、なんだと思う?」
「知らねえよ。何だよ、いきなり?」
「ガジっていうんだ、これ。この薬を飲むと、とても幸せな気分になれるんだ。時々幻覚を見るけど、甘くて、あたたかくて、やさしい気持ちになれる」
うっとりと語る。
「・・・・・・それって覚醒剤か?」
そう言うと、中崎は傷ついた表情になった。
「その呼び方は好きじゃない。私達は、この薬に救われてきたんだ。このガジを服用することで、至福の時間を過ごし、嫌魔にとりつかれることで味わってきた苦しみや悲しみをを忘れる。それが、このガジの会の主な活動内容だったのさ」
「・・・・・・・・・・・・」


ガジの会に対する、おれの不安は当たっていたようだった。


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