脳をえぐる小説集
死体を包んでいた嫌魔のひとつひとつが、死体からはがれたんだ。
その三十以上の数の嫌魔は、宙を少しの間、ただよった。そのあと、一瞬ぴたりと止まると、いっせいにおれの方に向かって飛んできた。
そしてその全てが、おれを包んでいた嫌魔と次々に重なっていって、ひとつになった。
三十以上の嫌魔が、おれの嫌魔と融合しやがったんだ。
嫌魔の膜の層がぶ厚くなり、表面に繊毛がたくさん生えてきた。ぶつぶつした細かいイボが浮きでてきて、前以上に醜悪な形に変わってゆく。
おれはものすごく不安になって、それをはぎとろうとしたが、やはり触ることはできなかった。
異変はまだ終わらなかった。いや、それから始まったというべきか。
外の方から、ざわついた気配を感じていたんだ。何だろうと思って、おれは窓から外を見た。
そして、ぶったまげた。