脳をえぐる小説集
おれは目を丸くして黙りこんだ。
おどろいたよ。そういうことがあるのかって。
でも、謎が解けた。
利美は、嫌悪というものを、感じることができない。だから、嫌魔に包まれたおれの近くにいても平気だったんだ。
嫌魔のせいで、利美に嫌われることはない。
少し考えてから、喜びがゆっくりと激しくわきあがってきた。
思わずおれは、利美の体を強く抱きしめて泣いていた。
やわらかかった。すごくあったかかった。
「どうしたです?お兄ちゃん、どうしたです?」
腕の中で、利美は顔を赤くしながらあわてていた。