アロマティック
「恋愛小説読んでる」

「マジ?」

 朝陽の手もとにある文庫本を、永遠が覗きこむ。

「恋愛に興味のないひとが恋愛小説を読むわけがない!」

 元気を取り戻した聖が、大きい声で断言する。

「あとはみのりちゃんの過去さえクリア出来れば……難しいけど、自分から話すように仕向けるしかないね、うん」

 名探偵を気取って顎に手を当てた聖が、ふむふむと大きく頷いている。

「厚い壁、突き破るには多方面から攻めるしかないですね。ここは永遠に協力しましょう」

「俺?」

 天音の言葉が意外だったらしく、自分を指さして驚く永遠。

「今さらそんな反応?」

 朝陽が、やれやれとため息。

「俺、好きだなんていった?」

「永遠、素直じゃない」

 認めようとしない永遠に、空からのダメ出し。

「いや、でも」

 永遠が反論しかけたところで、ドアが叩かれる。ドアの向こうから番組のスタッフが顔を出した。

「永遠さん、一部変更が出たんで、プロデューサーのいるスタジオまでお願いします」

「あ、いま行きます」

 スタッフの声に素早く反応したものの、話し合いの今後の展開を気にして、後ろ髪引かれるように重い腰をあげた。
 スタッフが姿を消したのを確認した朝陽の問いかけが、立ち去ろうとした永遠の背中にかかる。

「俺、みのりもらっていいの?」
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