アロマティック
 いつもの生き生きとしたみのりに戻ってほしい。
 萎れた花のように、元気をなくし、うつ向いて肩を落とす彼女を見ているのは辛かった。
 みのりに笑顔が戻るなら、なんだってしよう。

「よし、ショップごと買おう!」

「永遠くん……?」

とんでもない爆弾発言に、目を丸くする。永遠は白い歯を見せて不敵な笑みを返す。

「本気だぞ。みのりの愛用してるアロマメーカーも、ショップもチェック済みだからな」

 したり顔で、自分のこめかみを指でとんとんと叩く。

 永遠のそんな姿を見ていたら、元気付けようとしている気持ちが伝わってきて、みのりの胸はいっぱいになった。

「ありがとう。でも、お店は遠慮しておく」

「なんだよ、せっかくの申し出を断る気かー!?」

 みのりが声をあげて笑い、永遠は心の緊張がほどけていくような気がした。

「貰えるものは貰っておいたほうがいいですよ」

 とりあえず永遠は、お金持ちなんだから、と天音。

「とりあえずってなんだよ、とりあえずって。天音も出すか?」

「はい? なんでぼくが!? 勝手に巻き添えにしないでくださいよ」

 苦笑いを浮かべながらしっかり拒否をする天音に、その場にいた皆が笑い、和やかな雰囲気に包まれる。
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