アロマティック
 内心焦ったみのりが、会話を探そうとあくせくしていると、永遠が口を開いた。

「みのりさまの目は節穴でございますか?」

「さ、さま? みのりさま? えっ? な、なに……!?」

 目をぱちくりさせて後退するみのりを、永遠が手招きして呼び戻す。

「付いてるって。ほら、よく見てみ」

「え?」

 永遠は真剣な表情で自分を指さし、

「目と鼻と口がついてるだろ」

 唖然とするみのりに、イタズラっぽくニヤリと笑う。

「な、なぁんだ……ってもう! そんなの誰にだってついてるじゃないっ」

「なにもついてないってみのりがいうから、教えてあげようと」

「そのついてるついてないじゃないの! だいたいなに!? みのりさまって」

 だまされて文句を続けるみのりを、ドアを大きく開けた永遠が楽屋のなかへと通す。

「最初はチビ子だったし、気づいたら呼び捨てになってるし、なのにいきなりみのりさまっていままでいったこともないくせに、気持ちわるっ」

 永遠の横を通り抜けつつ、みのりの文句はまだ続く。

「お嬢さまに毒舌執事がいってるのを以前読んだ小説で見たんだ。面白そうだから使ってみた」
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