アロマティック
『永遠、落ち着いた? いい加減にしないと、俺も怒るよ? みのりちゃんに優しく、だよ! 空』

『こっちは任せて。とことん話し合って! 聖』

『みのりちゃんの気持ちわかってあげれるだろ? 永遠なら大丈夫。 朝陽』

『ドアの向こうで大切なひとが待ってますよ。 天音』

 同じ言葉でも、直接いわれるより文字で伝えた方が響くときがある。まさに今回の場合がそうだった。次々と受信するメールに目を通していたら、熱くなっていた気持ちが、次第に落ち着いてきた。それぞれ内容が違う彼ららしい文面の励ましが嬉しかった。

 一度のぶつかり合いで、みのりとの関係を壊すつもりはない。
 俺が望むのは、いままで通りの自然な関係。
 みのりがそばにいる時間。
 そわそわと少し落ち着かない様子で、目の前に座るみのり。そうさせているのが自分だと思うと胸が痛んだ。

 触れたい。
 励ましてあげたい。
 みのりの笑顔が見たい。

 思うのではなく、体が望む。

「俺さ、本当はみのりの気持ち嬉しかったんだ。でも、だからこそ、俺のために苦しまないでほしい」

 優しい笑顔を浮かべた永遠が、みのりに向けてそっと手を伸ばす。

「俺のために笑ってよ」

 壊れ物に触るように、みのりの頬に優しく触れる指先。柔らかな眼差しと、温かな指から永遠の気持ちが伝わってくる。
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