アロマティック
 なにも心配はいらないから。
 そういわれているようで、 強張っていた体の緊張がほぐれていった。目を閉じたみのりが身を任せるように、頬を預ける。

「みのりはひとりじゃないから。俺がいつだってそばにいること忘れるな。助けが必要なら、たとえ離れていたって真っ先に駆けつける。だからひとりで解決しようとしないで、頼ってほしい」

「わたし……頼るのが怖いの」

 みのりは勇気を出して本心を打ち明けた。その声は、心細げに震えていた。
 永遠の心に、みのりを守りたいという衝動がこみ上げる。悩みや過去の苦しみ、全ての痛みから遠ざけてやりたいと思った。
 頬を預けながらも、悲しみに睫毛を伏せるみのりの心に手を差しのべたい。
 どうすれば彼女を救うことが出来る?
 方法がわからず、苦悩する永遠の胸は締め付けられた。

 みのりは不安に襲われていた。
 前に進むためにも、過去を知ってもらわなければ。
 わかっているのに、言葉にだす勇気がどこかへ逃げてしまった。
 ただ、頬を預けた永遠の手に甘えるしか術がなかった。

「どした……?」

 みのりがなにかを伝えようとしている。敏感に反応した永遠は、迷いのなかにいる彼女にそっと声をかけた。
 永遠が、立ち止まったままのみのりを優しく促し、心の背中を押した。
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