アロマティック
 己を欺いてまで押さえてきた気持ちを、もう無視することはできない。

 今後、みのりを手放すことなど考えられない―――。

「永遠くん、ありがとう。でも、ちょっと苦しいよ」

「離さないからな」

「え……?」

「俺、お前にそばにいてほしい。ようやく自分の気持ちがわかった。だから離さない」

「永遠くん……」

「みのりが簡単に頼れない気持ちはわかった。俺、努力するよ。みのりの気持ち変えてみせる。心からの信頼を勝ち取ってみせる」

 永遠の真剣な想いは、真摯な態度からも表れていた。
 永遠なら全てを見せてくれるはず。我慢することはない。聞きたいことがあるなら、いまが聞くチャンスなのだ。

「じゃあ教えて」

「ん? なに?」

 永遠の胸を通して伝わってくる声が、優しく胸に届く。

「永遠くん、前に失恋したって話してたよね。その相手のひとって、どんな人だったの?」

 みのりの問いに驚いた永遠が、僅かに体を離したので、みのりは反射的に顔をあげた。永遠はその視線から逃れるように、大きな手で自らの顔を覆って背けた。

「永遠くん……?」

「あれは、もう少しお前を引き留めたかったから」

「ええと、つまり、口からでまかせってこと?」
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