アロマティック
「接点もないのに、もう二度と会うことはないと思ってた永遠くんが家に現れたときは、本当にびっくりしたんだからね」

「ごめん。勝手に連絡先教えて……」

 冗談で怒ったふりをしたものの、笑顔のみのりに対し、理科はいままで言い出せなかった謝罪の言葉を口にした。みのりは首をふる。

「で? 理花の心を揺るがした賄賂はなんだったの?」

「えっ!? えっとね~、デビュー当時、記念に作られたホログラム入りの写真立て」

「へぇぇぇ、プレミアものだったんだ?」

「そう! これが一部の関係者にしか配られないもので……あ」

 しまった、と慌てて理花が口を押さえる。

「なるほど」

 頷くみのりに、冷や汗。

「みのりちゃん、あのねっ」

 いいわけを始める理花を、手をあげて制する。

「いいよ。わかってる。理花の性格はちゃんとわかってるから。なんだかんだいいながらも、ちゃんとわたしのことを考えての行動だって」

「みのりちゃん……」

 みのりはわかってくれている。理花は喜びで目を輝かせた。しかし、みのりの言葉には続きが。

「……と、信じたい」

「あ! みのりちゃんっ」

 お返しだよ、と舌を出して笑うみのりに、理花も声を合わせて笑いだす。ひとしきり笑い、楽しげに歩いていたふたりは、駅に着き足を止めた。
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