アロマティック
 最近、わたしに向けられる永遠の笑顔。
 それは、氷を溶かす春の陽射しのような優しさに満ちていて、その温もりに包まれているんだと錯覚してしまうほど、眼差しは柔らかい。
 その日はじめて会ったときや、仕事が終わって戻ってきた彼の瞳がわたしを探し、見つけたときに浮かぶキラキラの笑顔が、わたしの心をじんわりと温かくしてくれる。
 幸せだと感じる。
 ただ、こうしてそばにいることが当たり前になっていて怖い。
 もし、アロマアドバイザーの役目を終えたそのあとは……どうなってしまうのだろう。

 永遠はわたしを必要だといってくれる。だけど、必要ってどう必要なの?
 アロマアドバイザーとして? それとも……?
 好意的なことはいってくれるけど、それをもっとハッキリ具体的に口にしてほしいと求めることは、図々しいだろうか? いま一歩、前に踏み出せないまま、自分の気持ちもハッキリしていないのに、そう望むのはよくばり?
 もし、あの色気のある低音ボイスで『好きだ』と囁かれたら……。

「いいのあった?」

 永遠の横顔に見とれていたみのりは、読んでいる雑誌から顔をあげた彼の唇が動くのを見て、みのりは我に返る。

「いいのって……? ああ、ボトルマグ! うん、ちゃんと皆の分買ってきたよ。カラーで色分けするつもりでから5色とも色違いなの。そのほうがそれぞれのボトルが判別できて分かりやすいと思って」
< 155 / 318 >

この作品をシェア

pagetop