アロマティック
 片方の口角を持ち上げ、ニヤリと不適に笑う永遠に、

「いやっ、ちょっと、ダメ、待って!」

 抵抗を試みようと顔の前に手をかざしたところで、息つく暇もなくくすぐられ始めた。

「あーはははっくっ苦しいー! たっ、たーすーけーてー!」

 くすぐったくて笑いが止まらず、上手く息が出来ずに苦しくなってきた。

「降参?」

 くすぐるのを止め、勝ち誇った王者の笑みを浮かべ、みのりを見おろす永遠。その間も指はいつでも動かせるように、みのりのわき腹に置かれている。いつくすぐられるのか、予測できない恐怖に首を振る。

「こっ……降参……っ!」

 肩で大きく息をしたみのりが何度も大きく頷いた。

「………」

 室内に、みのりの乱れた息遣いが響く。

「………」

「……?」

 しゃべることもままならず、息を整えているみのりは、永遠が黙ったまま言葉を発してないことに気づいた。違和感を感じて視線を永遠に向けると、仰向けに横たわった体を跨いだまま、動きを止めた永遠がこちらを見ていた。

「永遠、くん?」

 戸惑い、囁くように問いかけるみのりの声は、永遠の耳に届いていなかった。
 なぜなら永遠の心は、みのりの表情に奪われていたからだ。
 頬を火照らせ、息を喘がせるその様子はまるで……男に抱かれたあとのようだ。その表情に、永遠の体を欲望が突き抜けた。
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