アロマティック
 ドアを開け放ったまま慌てた様子で、誰かが自分の背後の人物に話しかけている。みのりがドアのほうへ顔を向けると、ドアをとおせんぼするように、聖が立ちはだかっていた。

「立ち入り禁止って、ここリハスタだろ」

 聖の向こうから、朝陽の落ち着いた声が聞こえてくる。

「だから、使用中なんだって。永遠ちゃんが、にゃって……やってるんだって!」

 取り乱した聖が言葉を噛んだ。

「やってねーよ!」

 反論の叫びをあげた永遠が、諦めの大きなため息をついてみのりの上から退いた。

「おはよー」

 聖の作った壁を、難なく通り抜けてぞろぞろと入ってくるメンバーの面々。みのりは慌てて立ち上がり、焦る心を隠して、精一杯の笑顔を作った。状況が状況なだけに、かなりひきつった笑顔ではあったが。

「みのりちゃん、おはよう」

「あ、うん、おはよう」

 キスまであとちょっとという現場を見ていなかった空、天音、朝陽の3人は普通に挨拶をしてくれるけど、みのりのほうはものすごい気まずさを感じていた。
 さきほど永遠に感じていたものとは違う緊張感から、胸が痛いくらいにドキドキしている。みのりは助けを求めるようにとなりの永遠を見上げ、そこに永遠がいないことに気づく。
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