アロマティック
「そっか……いや、正直、みのりが欲しくて欲しくてしょうがないよ」

「やりたくてやりたくてしょうがないわけね」

「聖! 余計な解釈入れんな‼」

「ほら、永遠を煽らない」

 天音が、悪ノリする聖をたしなめる。

「みのりちゃんが相手だと、簡単にはいかないわけだ」

「そうなんだよ。アイツの気持ちを考えると、簡単に進めないからキツいんだ。あー……」

 訳知り顔の朝陽に、複雑な気持ちを抱えた永遠が肩を落とす。再び壁にくっつけた頭が、力なくずりずり落ちていく。

「でもさ、さっきだって永遠から逃げなかったんでしょ?  全く気持ちがないわけじゃないと思うんですよ。とりあえずやっちゃえば? そこから気持ち結び付くこともあるでしょ」

「荒治療だな」

 天音の意見に、腕を組んだ朝陽が片方の眉を持ち上げる。

「永遠から動かないと、このまま仲良しで終わる可能性もあるんじゃない」

 空も頷いているところを見ると、方法の一つとして『あり』だと考えているらしい。

「とりあえずさ、永遠ちゃん。今度は邪魔されないように、前もって電話してよ」

 聖が、こうだよ、こう! と受話器を持って耳に当てる振りをする。

「いや、だから。今回はその、想定外だったわけで。俺だって見られるかもしれないようなところで抱くつもりは……」

「やろうとしたくせに」
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