アロマティック
「気まずい思いはさせたかもしんないけど、怒ってる様子はなかったよ。永遠、もう落ち込まなくてもいいんじゃね?」

「戻ってきたらフォローしてあげればOKでしょ」

「美味しいものご馳走してあげるのもいいんじゃない? みのりちゃん、洋菓子好きかな? クッキーとか、ケーキとかさ」

 これはいいアイディアだと手を叩き、目をキラキラ輝かせて立ち上がる聖。それまで状況を見守っていた空がすかさず、

「洋菓子? とりあえず洋菓子以外で考えよう」

「あっ酷い! 女の子なんだから、洋菓子好き―――」

「うるさい。洋菓子なんて洋物は邪道だ! 日本人なんだから甘いものっていったら和菓子だろうが! ここは和菓子の出番だろ‼」

「でた。和菓子」

「でたってなんだよ、でたって」

 聖とリーダーのやり取りに、とうとう永遠も顔を上げて吹き出す。くしゃっと笑うその姿に、ようやく復活の兆し。
 そこへドアが叩かれた。それぞれが顔を見合わせ、俺が出ると軽く手を上げた永遠が、立ち上がり大股でドアへと近づく。

「はい?」

「挨拶に伺いました。直江凌(なおえ りょう)です」

「あ! アロマティックの出演者」

 ドアの向こうの声に納得した永遠は、メンバーに声をかけるとドアを開けた。

「あ、どうも。改めまして、直江です」

 入り口に立ち、にこやかな笑顔で律儀に一礼。
< 167 / 318 >

この作品をシェア

pagetop