アロマティック
現実の俺は、みのりの過去を前に、無力だ。
みのりが負った痛みを、凌に返してやることも、凌のいるこの場所から連れ去ってやることもできない。
この仕事をしていて、こんなにももどかしい気持ちになったのは初めてだった。
俺がどんな薬でも作れる魔法使いなら。
みのりの苦しみを取り除く薬を作って、いつも笑顔でいさせてやるのに。
俺がもし、全知全能の神なら。
みのりを悲しませる、全てのものから守ってやることが出来るのに。
ありえないことを考えるほどに、俺は彼女のことばかりを考えている。
でも、当の本人は。
体は小さいが、自分の力で困難に立ち向かう大きな勇気を持っている。
それでも。
時おりスタッフに話しかけ、アロマや基材についていくつか言葉を交わし、またひとりポツンといるみのりを見ていると、ついつい一緒にいてやりたくなってしまう。
これ、過保護っていうのか?
なんか放っとけないんだよな……。
「撮影入りまーす!」
その声に、我に返る。
「永遠さん?」
カメラの方向とセリフを確認していたスタッフが、ぼうっとしていた永遠を不安げに見ている。
「あ、あぁ、大丈夫です」
安心させるために笑いかけた永遠は、スタッフの向こうの光景に目を見開いた。みのりに近づいていく人物。
―――凌。
みのりが負った痛みを、凌に返してやることも、凌のいるこの場所から連れ去ってやることもできない。
この仕事をしていて、こんなにももどかしい気持ちになったのは初めてだった。
俺がどんな薬でも作れる魔法使いなら。
みのりの苦しみを取り除く薬を作って、いつも笑顔でいさせてやるのに。
俺がもし、全知全能の神なら。
みのりを悲しませる、全てのものから守ってやることが出来るのに。
ありえないことを考えるほどに、俺は彼女のことばかりを考えている。
でも、当の本人は。
体は小さいが、自分の力で困難に立ち向かう大きな勇気を持っている。
それでも。
時おりスタッフに話しかけ、アロマや基材についていくつか言葉を交わし、またひとりポツンといるみのりを見ていると、ついつい一緒にいてやりたくなってしまう。
これ、過保護っていうのか?
なんか放っとけないんだよな……。
「撮影入りまーす!」
その声に、我に返る。
「永遠さん?」
カメラの方向とセリフを確認していたスタッフが、ぼうっとしていた永遠を不安げに見ている。
「あ、あぁ、大丈夫です」
安心させるために笑いかけた永遠は、スタッフの向こうの光景に目を見開いた。みのりに近づいていく人物。
―――凌。