アロマティック
 永遠は心から信頼してきた大切なメンバーのひとりひとりを、感謝の気持ちで見つめた。

「今日は、本当に助かった。皆、ありがとう。でも、これ以上、俺とみのりの問題で頼ることはできない」

「なにいってんの? 永遠に頼まれて動いてるわけじゃないんだぜ」

 胸の前で腕を組んだ朝陽が、気にするな、と口角を持ち上げて笑う。

「そうそう。こっちはこっちで勝手に動いてるだけなんだから。あ、永遠ちゃんには迷惑かけないから安心して」

 聖が永遠の肩を軽く叩いてウインク。

「みのりちゃんと一緒にいるの、けっこう楽しい」

 空がほんわりと笑う。

「とにかく! 今日は無事に終わったんだから、あとはみのりちゃんと楽しんで」

 天音が永遠の背中をポンと押す。

「観覧車でラブラブ」

「やーだぁ」

「ふふふ」

「お、お前ら……1度、高所恐怖症の気持ちになってみろよ! ってか、朝陽は俺の気持ちわかるだろ」

 高所恐怖症、唯一の味方、朝陽に共感を求める。

「俺? 俺なら絶対乗らねぇ」

「だろ!? 他にも乗り物はあるのに、よりによって一番高くあがる観覧車……」

 永遠の心は乗る前から挫けている。その姿に憐れみを感じた朝陽が、背中を叩いて勇気づけた。
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