アロマティック
「みのりちゃんがつけてる口紅、キスしたくなる唇って謳ってるだけあって誘われるだろ?」

「しかも、キスしても落ちないんだって」

「どうする永遠ちゃん! 観覧車のなかは密室だよ」

「そんな余裕あるわけないだろ……」

「ほらほら、みのりちゃんが待ってますよ」

 声に力をなくした弱気な永遠を、メンバーの皆が元気付け、みのりの待つ観覧車へ向かった。


「おまたせ!」

 5人そろって現れたのを、みのりは笑顔で迎えた。

「永遠くん、今日はお疲れさま」

「ありがとう」

「じゃ、仲良くいってらっしゃい!」

 笑顔で見送る4人に、みのりの横に並んだ永遠は恨めしそうな表情。永遠が浮かべる表情に気づいたみのりは首を傾げた。
 もしかしたら皆と一緒に乗りたいのかな?
 みのりはもう1度誘うことにした。

「本当に他の皆は乗らなくていいの? ゴンドラ大きいから4人まで乗れるみたいだけど、誰か一緒に乗らない?」

「乗らない」

 ニヤニヤと笑いながら首を振る4人。
 それにしてもなんであんなに楽しそうに断るんだろう? 少々の疑問を感じつつ、これ以上誘うのはしつこいだろうと判断したみのりは、

「わかった。じゃあ、永遠くんといってくるね」

 観覧車のスタッフに誘導され、ゆっくりと流れるなかの暗いゴンドラに乗る。少し遅れて上昇し始めたゴンドラに永遠が乗り込んできた。
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