アロマティック
「ね、見て! 皆がちょっとずつ小さくなってる。遊園地全体のイルミネーションも見えてきたよっ」

 沈黙が怖くて、なんだか妙にはしゃいでしまった。

「……見れない」

「え?」

 永遠の小さな声が聞き取れず、聞き返した。

「俺……」

「なぁに?」

「いや、なんでもない」

「?」

 やっぱり永遠の様子がおかしい。
 暗いゴンドラのなか、反対側に座る永遠の顔に身を寄せて様子をうかがった。
 高所恐怖症だということを知らないみのりは、目を閉じて眉間を寄せている姿に驚いた。その辛そうな表情に、楽しい気分も吹き飛んだ。

「永遠くん……」

 気遣うみのりが、永遠の肩にそっと手を乗せると、びくりと目が開いた。

「大丈夫。みのりは景色を楽しんで。俺は……いいから。ごめん、せっかく一緒に乗ってるのにな」

「気分が悪いなら無理しなくてよかったんだよ?」

「ああ、いや……俺さ、俺、俺……高所恐怖症なんだ」

「えっ? 永遠くんも?」

 Earthのメンバー、揃いもそろって高所恐怖症なの?

「永遠くん以外の4人が高所恐怖症だったんじゃなかったの?」

「逆なの。俺が高所恐怖症なの。正確には朝陽も。他の3人は平気」

「あ、あー……」

 妙に納得。
 観覧車のくだりを振り返ると、いたずらを仕掛けた子供みたいにやけに楽しげだった。
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