アロマティック
「永遠くん、くすぐったいよ……」

 繰り返される首すじへのキスに、やめさせようとする声にだんだん力が入らなくなってきた。
 こんな状況でうまく考えることなんてできない。
 本当にやめて欲しいのかすらも、わからなくなる。
 ゴンドラが動き、軋む音に混じって、永遠が降らすキスの音が小さく聞こえてくる。
 唇が触れるたびに、体が少しずつ溶けていく。みのりはしがみつくように、永遠に回した腕に力を込めた。

「……みのり」

「ん……?」

 呼ばれた気がしたみのりは、ぼんやりと夢を見ているような表情で永遠を見た。永遠の僅かに下がった視線は、唇を見ていた。

「落ちない口紅……どんなキスまで落ちないのか、試してみようか」

 返事を待たずしてみのりの顎を片手で捉え、上向かせる。
 半分ほど閉じられた永遠の瞳の奥に見えるのは、紛れもない欲望の炎。それでもみのりは怖いと思わなかった。

 何度も夢見たキス。

 永遠くんが

 相手なら―――。

 みのりはそっと目を閉じた。
 頬に永遠の息がかかる。
 最初のキスは、唇に触れるか触れないかの羽根のような軽いキスだった。
 ゆっくりと唇は離れ、互いに見つめ合う。再び目を閉じると、今度は唇に唇がしっかりと押しつけられた。
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